アネモネの詩 (初稿)/もっぷ
たぶんそこには 無 すらなかった
透明 すらなかった
そのまなざしは父親には赦された
だけど母親は女の子だったから赦せなかった
のだろう(たぶん)自らを
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無、を得て ほしがったのは
なみだの源泉だった
、透明という響きを知って
それはたとえて初恋と言い得るほどに
焦がれる存在に値して
だから恋して
もとめて
ついに不意打ちのなみだの夜 その
ひとつぶは 開いてあった手帳の
白い色彩だけのページに落ちる
、三つ編みの少女はそこまでを昨日と決め
髪を解放すると
私、になって日日を見つめる
鏡の彼女もいまだ泣いているし
いっそ靴など脱ぎ捨てて
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