破り忘れのワンシーン/葉月 祐
古い本のすき間から
ハラリと一枚の写真が落ちた
見なければ良かったと気付くのは
そこに写る二人の姿を見た後の事
笑顔で写る十年程前の私と 、の姿
繋いだ手を離した日から
棄てる事も出来ずに
本棚の隅に
隠す様に 忘れられる様に
保存していた時期もあった
ただただ 眩しかった、
結局は耐え切れずに
ある年の事
半ば衝動的に
その本棚をひっくり返して
残された褪せた思い出を
全て 全て
破り棄てた はずだった
あの日で時をとめた
褪色した過去は
一瞬でよみがえり
声の代わりに涙が出た
涙は拭かずに 私は
机の上
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