まだ青い毬(いが)/葉月 祐
 
 
まだ青々とぎらつく
その実を守る毬(いが)は
時には熟し切らないまま
木から落ちてしまう

栗の木の側の小道を歩けば
それは突然 気配もなく
私の背中や頭めがけて
数メートル上から降ってくる

まさに狙われていたとしか
言いようのないタイミングで
栗の実をその中に抱えながら
私のどこかへと『着地』する

あの容赦無い痛みを
なんと例えたらいいものか
「痛い!」なんて
一言で表せるような
そんなかわいい痛みではない

離れたところから
そんな私の様子を目撃しては
母が大笑いするのも
この季節お決まりのワンシーン


もう少し時が流れると

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