農家/葉leaf
 
土に鍬を差し込むことで
自然に対して解釈を加える
大きな実りを導くために
剪定、摘蕾、摘果、花粉交配、消毒
自然に対して批評を加える
訪れる稲穂や果実、野菜の類を
味わうことで精密に読解し
市場に売ることで解釈空間へ投げ込む
自然の内にあり自然に翻弄されながら
技術の内にあり技術に研磨されながら
自然と技術が共に調え合う農の電磁場
人は己の身体を所有し
身体の労働によって得たものを所有し
作物も己の固有の身体を所有し
己の生長による実りを所有する
大きな実りは所有の政治学の舞台で
自然の権力に人の抵抗権が拮抗し
自然が人に消費されることで
自然と人との闘争が妥結に向かう
命の連鎖には古代の宗教が宿り
滅しては生まれていく生命の跳躍には
死と等しい祈りと信仰がこもる
この宗教学の細密な理論が
田畑の朝露の中に映し込まれている

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