花束の人/葉月 祐
 
あなたはそこに立っていた
無くなる事のない
花束を抱えて

何も言わずに微笑み
太陽を背にしながら
あなたは
その花束を抱えていた

擦れ違う見知らぬ人にも
一輪 一輪 花を差し出し
ありがとうと 相手が笑うと
あなたは優しく微笑んで

何も言わない 何も求めない

わたしは
幸せのかたちを初めて知った
目の前で起こっている
その出来事こそが
幸せの姿なのだと思う

いつも
派手な色の花は無くて
光を和らげた様な
触れたら無くなりそうな
そんな花の束を
あなたは抱いている

花は消えずに それぞれ凛としている

あなたも多分その花達と同
[次のページ]
戻る   Point(2)