「追憶/墓荒らしの憂い」/桂
「追憶/墓荒らしの憂い」
過去は下に沈んで
サラサラと真新しい記憶が
その上に積もる
一人ベランダでタバコをふかしながら
墓荒らしのように
記憶の地層にスコップを入れる
あんなに好きだった女の子は地中深く眠るミイラに
あの頃見た夢は遺跡から発掘された過去の財宝のように
手に取ると音をたてて崩れ去る
スコップを掘る手を止めて考える
今まで生きてきた中で一体何を手にしただろう
こうして物思いに更けている間にも真新しい記憶がサラサラと降って俺を沈めていく
やがて砂が一杯になって
砂時計をひっくり返すように
記憶を逆さにされ走馬灯を見る
その最後の時に
ほんの一握りでもいいから
持っていける砂が欲しい...
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