ほほえみ。/梓ゆい
父が笑う。父が笑う。
もぎたてのきゅうりをかじり、今年の出来は上等だ。と呟いて。
父が笑う。父が笑う。
駆けよった娘達を抱き締めて
大きな手で頭を撫でながら。
父が笑う。父が笑う。
たった今到着した特急電車迎えに来た家族の姿を
駅のホームで見つけたから。
父が笑う。父が笑う。
大きく降った手
お父さん・お父さん。と呼ぶ娘達の名前を呼んで。
父が笑う。父が笑う。
静かに横たわる病室のベッド
ようやく会えた家族に見守られて。
父が笑う。父が笑う。
焼き付けた写真の中で
いつまでも。いつまでも。
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