風鈴/藤原絵理子
 

夏の夜の風鈴の音は
少女の細い髪に吸い込まれた
憧れていたものを忘れて
漂っている 闇の隙間

みんな帰った後の音楽室で
ピアノを弾いていた
早く帰らなきゃいけないのは
わかっていたのに 夕暮れの斜陽に

哀しみは恋した時に なんて嘘で
まだ髪が細かったころから知っていた
その哀しみを 急いで隠した

風が泣いている 木立を抜けて
遠ざかる どこへとも知れず
泣き声だけが残って 繰り返している

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