夏の薄氷/葉leaf
 
夏は薄氷で覆われた
巨大な電流の森
微細な海たちが大気にひろがり
やさしい雷がひとの額を飛び跳ねる
ひとの中では湖の水位が高まり
ひとの外ではまなざしが群れる
行進する憂鬱たちが
植物の緑を深めていき
渦を巻く光の柱たちが
風の電圧を高めていく
夏の薄氷は常にあたらしい
砕けて融けて再び凍って
それは夏の命が紡ぎ出す
無意味で全く理屈の通らないもの
極めて薄く凍っては
夏の増殖を厳しく停止する

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