風の国から/yo-yo
 
  「風のことば」

西へと
みじかい眠りを繋ぎながら
渦潮の海をわたって
風のくにへ

古い記憶をなぞるように
活火山はゆたかな放物線で
懐かしい風の声を
伝えてくる

空は雲のためにあった
夏の一日をかけて
雲はひたすら膨らみつづけ
やがて空になった

ぼくは夏草の中へ
草はそよいで
ぼくの中で風になった
風には言葉がなかった

洞窟のキリシタンのように
とつとつと言葉を風におくる
ゼウスのように
風も姿がなかった

風のくにでは
生者よりも死者のほうが多い
明るすぎる山の尾根で
みんな石になって眠っていた

迎え火を焚いて

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