似て非なる/大覚アキラ
あなたからの電話で目が覚めたのは
蒸し暑いベッドの上
胃に残るアルコールと肌に纏わりつく汗だけが
かろうじて
昨日の私と今朝の私を繋ぐ細い糸
昨日と今日は
けっして地続きではなく
きっと明日も
今日とはまったく何の脈絡もない一日
まるで
卵と鶏が似ても似つかないものであるように
ヤゴとトンボが似ても似つかないものであるように
昨日も
今日も
そして明日も
繋がっているようで
けっして繋がっていない
この受話器の向こうから聴こえてくる
あなたの声も
実は
あなたととてもよく似た声の
あなたとは似ても似つかない誰かの声かもしれず
昨夜
泥酔してシャワーも浴びずに眠りに落ちた私は
今朝はもう
この世界のどこにもいないのかもしれず
そうやって
また私は
昨日とは違う私を
生き続ける
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