桃獲り/葉leaf
一日が浮遊しはじめ、太陽とともに旋回するに先立って、私は何かを収穫している。赤やピンクや白で美しく色づき、うっすらと毛が生えているこの「桃」と名指される何かを収穫している。夏の果樹園には一面に記号が散らばっていて、どうやらこれらの記号は解体された後の残骸のようだ。体の姿勢を樹の造りに合わせて随所の筋肉を働かせて、私は手で何かをもぎとる。何かにはあらかじめ意味が付与されていないため、私はその何かをもぎ取ることに付帯する様々な行為によってその何かに文脈を与える。だがこの何かはすべての文脈を拒否するので、いつまで経っても何かなのである。私は何かが樹木からも独立せず、風景からも独立しないのを見る。何か
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