還流/寒雪
 
舞い上がる熱砂が
太陽と熱風に
追い立てられて
僕の肌に纏わりついては
心の奥底に
欠片になって埋もれていた
ぼくの情熱を
ゆっくりと
それでいて確実に
絡めとっていく
ちっぽけでがらんどうな
ぼくの抜け殻を
瞬きひとつせずに
ただまっすぐに
見つめているのは
黒髪を見事なまでに
携えた
悲しみに似た
きみの眼差し
思いを言葉に
監禁してしまうのは
いつも無意識に
堂々と
出来ていたはずなのに
ぼくに向けられた
きみの
抱え込んだ誹謗に似た
その瞳が
ぼくから
伝えるべきなにかを
みんな持ち去ってしまって
ぼくは
ただ
退くことも
叫ぶことも
出来ないまま
気が付いたら
大粒の涙に似た
きみへの言葉を
目から垂れ流していた


ぼくは
きみに
なにを言えば
きみに向かって
一歩踏み出すことが
出来るんだろう
時だけが無駄に
駆け抜けていく

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