生き方/在り方/もっぷ
 
の手にした大きなスケッチブックに描かれつつある風景画は
とても子供の遊びとは思えない見事さだったから

はっと少年は振り向くと担任と目が合う、
やあ、と大人のほうからにこやかに声をかけた
が手遅れだった 少年は画を細かくちぎり風にまかせると
絵筆も何もかもを放り出して駆け出した、どこまでも
どこまでもどこまでもどこまでも――
…それきり彼の姿を見たものはなく、家では
片親であった母親がいつまでも泣き続け何も食べなくなり
少年の不在を追うようにして衰弱の末に亡くなった

 * * *

――はずれにぽつんと位置するさびしい墓標に
いつしか良い香りの絶え間なく
うつくしい音色もしばしば聴こえる けれど
町の人間は決してその 邪魔 をしないようにと
してはいけないと』「さあおやすみなさい」「おやすみ、パパ」


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