灰の肖像/ハァモニィベル
 
〈ふつふつと煮えたぎる〉孤独の中で、
〈爆発と偉業の準備〉をするために帰る
  「夜の屋根裏部屋」には、
 過去を殺したナイフが、
 心臓に 突き刺さっている。

盲目の壁を背に野うさぎの骨は笑う。
亀裂から、?き出した自画像のように
手を振って。

床に落ちた一冊の古本の頁に、富永太郎の詩。
――『手』
  「おまへの手はもの悲しい
   酒びたしのテーブルの上に。
   おまへの手は息づいてゐる、
   たつた一つ、私の前に。
   おまへの手を風がわたる、
   枝の青蟲を吹くやうに。

   私は疲れた、靴は破れた。」

これは、もう随分古い事件で
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