風のつよい日/マチネ
いつの間にか私はすっかり健康になり
霧雨が降る夏の日に
じっとりとした汗をかくようになりました
決して集めることのできない水滴を
体に吸い付けて
はじき出して
感官としての人差し指を
もう長いこと
忘れていた
触れるための指であるはずの指を
その通りに使い
その上でなかったことにして
数限りなくある朝の形容を
隠喩を
換喩を
つづり続ける日記帳のようなものがあって
それは人差し指から始まっている
今日のような湿潤な日
振り払うことのできない、水と汗
そこから私達の言葉が生まれる
明日の県北部は晴れ
ところにより風のつよい日となりそうです
大通りの交差点で流れていた天気予報
ゆっくりと読み上げられる音声を
そのまま吸い取った人差し指が私の人差し指で
私のからだは、そんな夏の日にじっとりと汗をかき
とても健康になりました
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