藤尽きて/藤山 誠
 
柔らかい光から逃げようと
藤棚を下から眺める
滝のよう流れる花びらが
春の喜びを押し付けてくる

地面いっぱいに散らばる藤を見て
また俺だけが生き残ったのだと思う
春を感じすぎたのだ
だから死んでしまったのだ

今日もまた
虫共が夏の暑さを吹聴する
俺は窓を閉めてクーラーをつけて
明日が何曜日だったかだけを思い出そうとする
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