氷の記憶/由比良 倖
 
がぼんやりとして


身体など要らないよまた海へ来る約束だけ忘れないでいて


人類がきらきらと死に絶えた日、ずっとブランコに乗って見ていた


私などいない世界へ消えたくて)文字の通り)に身を投げ入れる


甘い粒、光の夢が降りしきる底でおんなじ雨を浴びてる


雨降りの記憶の遙か彼方には奇跡などないなんて嘘だよ


願望は遠ざかる日常でただ泣きたい程に夢見たいだけ


無音の首を引っ掻いて何も感じない日を青く彩色する


日と痛みだけだよみんなひとりきりでも何かして死ぬまで遊ぶ


透き通る林檎の夢を曲がる切れ切れの頭と置き去りの足


有り方はただひとつだけ雪道へ孤独のための青を映して


夜を抜け誰もが生まれる前の朝、数えもせずに錠剤を飲む


君との距離が離れてく、天国は無人の街のチャイムみたいに


あたたかなガラスのような明るさを抱いて心を殺して眠る
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