故郷/葉leaf
何の留保もためらいもなく
故郷の風光は私を厳粛に迎える
故郷の振り撒く花粉を
身体の至るところで受粉して
私は故郷と賑やかに斉唱する
人が生きていく循環において
亀裂のように打ち込まれる物質は
表情もなく転がっているが
故郷はとがった物質ではなく
身体や生命を持っている
故郷は私を所有し
柔らかい笑顔で愛を示す
私は故郷との贅沢なおしゃべりで
ちりばめられた欠落を補償し
壮大な海に抱かれる
故郷も私も充分生きている
死んだ物質には決して語れない
蠢く神話をどこまでも語り継いでいく
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