水辺 ふちどり/木立 悟
火の樹を鎮めようとして
霧の葉が燃えてゆく
夜の曇の表情が
波の上をすぎてゆく
光の会話のほとんどが散り
眠りのなかで育とうとする
小さな音が集まりかたまり
しゃくしゃくと割れては消えてゆく
小さな青が終わり
淡い黄は羽ばたき
瞳はうすく
片方の空をふせる
雨は重なり 雨はすぎ
地平に歪みを残したまま
次の朝を
けだものを招ぶ
とじて とじて
星と涙は巡りこぼれ
まぶしさの棘に
ひらき ひらき
ひらかれてゆく
しあわせとよろこびを
足しても足しても減っていき
ひとつの器に残るのは
いつもひとつの響きばかり
火の樹は夜の海を照らし
遠くから新たな雨が近づく
光の拍手は静かにつづき
器を差し出す手を満たす
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