眠れない夜たちへ/印あかり
 

花のブロウチを舐めてみた
ああこんな味か。とふに落ちて
疑問の芽がひとつ摘まれたので
多少こころよく布団へ帰る



体が眠ってしまわれたので
わたしは心と遊んでいる
鼻ですら知らない月の匂いを
心の隣で嗅いでいる



高踏な言葉が詰まった陶器を
いちにのさん、で放りなげた
散り散りに逃げる漢字たち
ひらがなは震えて立ちすくんだ



あれは蛍ですか。と訊いたら
笑顔で首を横に振られた
あの日からわたしは
あらゆる灯りに恋をした


 
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