うつわ みどり/木立 悟
野と街の境に空が落ち
生きものはおらず
水は澄んで
底には岩と樹がゆらめいていた
細長い午後の天蓋を
幾度も廻る光の帯
窓をすぎる曇
疑念の花
上には何も無く
地は雨の色に満ち
瓦礫にころがる傘
水の声に目をつむる
ひとつの曇
ちぎれる曇
渦を持ち 花を持ち
笑みを持つ双つの曇
何も無い場所に
音が現われ 色を撒き
手のひらの水に龍を描き
底に底に沈みゆく
崩れたままの池を
樹が網のように見下ろしている
すぎるものすべて水紋に消え
ひとつの色だけが響いている
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