嗜好は変化しない/ホロウ・シカエルボク
 

化石の埋もれる地下の回廊のひと隅の寝台の上で太古の記憶を移植されたような目覚め、血流はゆっくりと流れ、そのうねりが内耳の奥でうっすらと轟いている、そんな目覚めだった、時は気化しない雨粒のように降り積もり、巨大な集合に変化していく、一面にモザイクタイルがちりばめられた断崖の壁面のように、三次元の限界に挑むみたいに、その澱みない蓄積の感触の中で朝はプレスされて、意識は厚さ数ミリの布切れになって漂う、それは回転体となって行きつくあてのない独り言のような風切り音を立てている、習慣的に流し込まれたトーストが疎ましげな目つきをして胃袋へと緩慢な落下を続けながら、小麦のころの記憶を弄っている、トーチカの裏側
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