もうひとりのわたし/
光冨郁也
イルを発射する。
空中の軌跡。
(自分の心の中に、
すみついた他人の声は、
白煙とともに消えてしまう)
青年のわたしは、
半透明の雲のようになり、
起き上がる。
振り返ると、
ベランダの床に、
大人になれなかった、
もうひとりの、少年のわたしが、
おもちゃを手に眠っていた。
わたしは微笑み、
冷めた手で、
汗で濡れた手の、
幼いわたしをそっと抱きよせ、
夢の空に離陸していく。
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