過去を捨てた男/葉leaf
男はマッチを取り出すと、きれいに粉末にした。そのうえでタバコを幾本も取り出し、小さな城を作った。男は衝動を失っていた、ただ衝動になり損ねた液体が際限なく湧き上がってきて、涙腺からあふれて仕方がなかった。男は泣いてはいなかった、例えばコンピューターのディスプレイの点滅、交差点の忙しない交通、大学の某教授の講義、世の中のあらゆるものが涙となって男を経由して大地へと滴るのだった。
男は過去を捨てていた。過去には針でできた栄光があり、綿でできた受難があった。人生が自らにスティグマを科すことから男は逃れたいと思った。例えば組織による人権蹂躙、社会からの迫害、男は侵害された権利を主張することができたし、
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