寝床川底/蒼木りん
田んぼのわきを流れる
水を引くための小さな川
たぶんきっと
顔を上げれば
向うには山が見える
私の視線は川の中だった
銀色の魚の腹がひるがえったあとに
裸足が川底の泥を巻き上げて走る
ビール瓶の破片が尖っていた
予感というより想像どおりにそれは
足の裏をザクリッと刺して
血の煙が立つ
ぱっくりと傷口が開く
私は
私の手がシーツをぎゅっと握っているのに気がつく
大人はいない
泣いてパニックになっている場合ではない
傷口を押さえて早く家に帰り
病院に行って縫ってもらわなければ
冷静に考えて
私はいま
大人であった
醒めているが瞼は閉じたまま
高熱の床で
ときどき菌が私の身体を刺すので寝返りを打つ
朦朧として見た想像である
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