開かずの間/wakaba
 
先生はいつも家に屋根裏部屋があるふりをしていて
どうしよう雨漏りだと慌てふためいて
今日の空模様が今ひとつであることを
哀しみに満ち溢れた顔で大袈裟に伝えてくる

まったくどうしようもない
こんな時代だから仕方ないですよと
腕組んで話す校長は校長で
家に地下室があるふりをしているから
学校は全クラス今日も元気に学級崩壊

白塗りの壁に円周率がびっしり書かれた教室で
山積みの漢字ドリルを処理していく私たち
首という字を首首首首と繰り返し書く
放課後のチャイムが鳴ってハッと顔をあげたら
教壇で先生が首を括っていた

大人は信用できない
だから私たちは家に開かずの間があるふりをして過ごす
うちの襖からは手首が出てくるだとか
うちの畳は腐って虫が湧いてるだとか
怯えながら慰めあいながら過ごすけれど

どうしてだろう
そんなことしたくて学校に来てるんじゃないのに
どうしてだろう
そんな大人たちを見てうんざりしてきたはずなのに
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