徴(しるし)/大覚アキラ
 
月曜日
土砂降りの夜
御堂筋に面したビルの8階から
車のテールランプ
流れていくのを見下ろす

闇に浮かび上がる
白い糸のような雨
滲むネオン

夜なのに
雨降りなのに
空は薄ぼんやりと明るくて
赤紫の襞のような雲が
山の向こうまで低く続いている

不吉だ

ふいに思う

そうだ
なんだか毎日フワフワしていて
うっかり忘れるところだったよ
不吉って
こういう感じだったんだな
皮膚の下がざわついて落ち着かない感じ
口いっぱいに頬張っていたガムは
いつのまにかすっかり味がしなくなってるよ

ねぇ
アンタがくれたガム
これ何の味だったっけ
思い出せないんだ教えてくれよ
そんな不吉な笑い方してないでさ

ところで
アンタいったい
誰だ
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