大洪水/kaz.
一章 血
黒人の肌からは
真夏の匂いがする
この血はどこから来たのか
それを辿ることができるのは
魂の道筋があるから
来るべき主語の行方があるから
主語のない国へ僕は行こう
僕らが誰も見たことのない場所へ僕は行こう
そこで略奪と殺戮の血を浴びて
僕の行き先が僕らにわかるようにしよう
僕の居場所を誰も行くことのない場所にしてしまおう
たった一人で言語について問い詰めよう
たった一人で思慮のない問いを追い払おう
たった一人で行く宛のない手紙を書こう
たった一人で
それらがすべて終わってしまい
残された問いがぬぐい去られるとき
二章 空転
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