続・銀の雨/kaz.
木の上で生活し始めてからもう三日も経つというのに、兵士たちの姿は消えない。消えた、と思ったときには、また別のところから、姿を見せている。鳥たちの羽ばたき、猿の鳴き声のリズム。私の走りはちょうど重なる。私の木の葉を踏む音を隠してくれる。どうして逃げ出したのか、少しも記憶にない。頭に浮かんでいるのは、脱走兵は射殺される、という指示だけ。どこまで追ってくるのか見当もつかない。追い掛けと逃げの単調な繰り返しではなく、他の音に紛れた足音に対し、照準を合わせるようにして取り囲む準備が、兵士たちには出来ている。
銃を構える音。野生の小動物のリズムにはない足音。その方角から動きを捉える。脳裏に浮かぶ微粒子は
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