いま、ふたたびの雨/伊藤 大樹
どれだけの距離を従え
測ることのできない冥さが
草葉の影を濡らし
遠くで誰かのために海が鳴る
遠ざかり そのため多く夢見た
わたしたちは 健やかだった
打たれたかもしれない雨について書かれた本の
余白に雨音を聴いた
濡れなければ通れないいくつかの道で
傘を打つ雨粒に留意しながら君と歩いた
気づくと砕ける骨の音が
ふたりの狭い冥さに雪でもないのに積った
そして測れない磁場が
深さを浸潤する日暮れとなって
黙契のようにわたしたちを包容する
皮膜のような夏に
なにもかも思い出されなにもかも夢見た
断念へ向かう岐路を経て
別れを暗告する水のために
沈殿した石はどこよりも青かった
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