婚約/桜鬼弓女
 
主に倦まれた指環 宝石箱の内に眠る
君に倦まれた私 百合の柩の内に睡る
(魂は真砂と化してうつろの闇にさらさらと星の如く耀けば………)
死者は鏡を見ない 鏡には心が映る故
おのが姿を映さんとしても(屹度)君の影が映り私を苛むのだろうから
鏡の中 君は私の手を取り 存在価値を剥奪された指環をくぐらせる
(死者への手向け)
葬儀は終了し 私は原子に還るのを待つのみ
君はもう けして振り返らない
けれど刹那の横顔に一筋の光素が流れたのは………
(なんて残酷な幻視!)

(彼ガ
   泣ク
     筈ハ
       無イノニ。)
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