不幸を知る/KEIKO
私は不幸だわとあなたは呟く
夕焼けが美しかった窓からの風景も
今はただ真っ暗な闇が広がるだけ
不幸だなんて感じた事がないと僕は言う
闇の中に灯台の灯りだけがまたたく
あれは誰かの道標になっているのだろうか
あなたは不幸なんかじゃない
一体不幸が何者なのかを知らないだけだ
不幸を知るあなたは幸せをもまた知っている
潮の香りが微かにあなたの髪に移った
今夜は静かな夜になるだろう
本当に不幸ということはと僕は続ける
不幸だとさえも感じた事がないことだ
真っすぐに暗い海を見つめるあなた
夜風に冷えてしまったその細い手に
平熱は高めの僕の手をそっと重ねてみた
今夜は僕に初めての不幸をください
そして不幸を知る幸せを教えてください
朝日はきっと海を綺麗に染めるだろう
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