もと居たところ(ゴル投稿長考版)/高橋良幸
 
「生きている」
 この世界に

「生きていた」
 あの世界に

ああ
なつかしいな
西暦があった世界の2000年頃に
わたしのバリエーションが詩を書いていた
おそらくそんな世界があった
それは確率論から導かれるお話だ
どこかの国の暦
惑星が周回する単位
だれかが数え始めた自然数
それらの存在を掛け合わせた世界
それをなつかしむわたしがいる世界

わたしはわたしの存在確率が0に漸近する中
生きてきた
わたしのバリエーションは皆
死んでしまった
人間が2人生きている確率は人間が
1人生きている確率よりも
ずっと低い
そんな事情で
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