ノー/イシダユーリ
私の口癖は
わからない
彼女の口癖は
面倒くさい
画面をすべっていく
文字
君の顔のうえを
永遠にすべって
君には
降ってこない
ザラメ
それには
トゲがあり
それには
色があり
そして
君には届かない
ということが
甘い
わたしは
目をつぶりそれを味わう
そして
ここで
ひとりになる
わたしは
わからない
と言う
君が指さす
陶器の光を
みながら
わからないよ
指がおれまがっている
わからないな
穴にすいこまれる
視線
夏だというだけで泣いている
子ども
彼女は彼に言う
面倒くさい
求めがわかれていく
葉脈のよう
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