死活/飯沼ふるい
葉桜の並木道を一台の霊柩車が行進していくのは
28℃
「にじゅうはちどしー」
と、略さずに呼びたい一日
の真白い光
噛み砕くと
腐った果実のにおいが広がる
※
額から垂れる汗の微温さや性器の湿り気がどうしようもなく不快だった。このまま町の風景に鈍く固着していく予感が、僕を解放してくれる誰かを求めずにはいられなくさせた。密林のように舌を絡ませあい、じゅくじゅくと沸騰しては冷えて固まる死という堆積物をお互いの肺胞におさめあう誰か。そんな血みどろの想念を、丁重に運ばれていく骸へ注ぐ視線の裏で患いながら、誰にも悟られないよう親指をそっと掌へしまった。
誰もいないのに。
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