峠/葉leaf
 

音が鳴った
切り刻まれた音の破片が鳴った
山道はカーブが多く
自動車を運転して初めて身を冷やす
運動の湿り気が増えていく
桜は気づかれないまま
過剰に通り過ごされ
春の上澄みだけが取り残された
二駆の軽自動車で峠を上っていくと
力が坂に吸いとられていく
この峠は長くて夜のようだ
どこかに照っているはずの月を探して
一切の報酬は拒絶された
その峠を越えると
一気に広がる視界が
世界の再開と更新を告げるようで
鳥が鳴いた
知り尽くされた鳥の細胞が鳴いた
下り坂は昼のように長く
力が坂に増幅されていく
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