恋人/藤原絵理子
夕方のショッピングモールで見かけた
こげ茶のブレザーと黒いリュック
早足の後姿は あの頃と同じで
リュックから にょきっと突き出て揺れているゴボウ
器用な指先を思い出す
鉛筆を削るみたいに ささがきゴボウ
茶色い削りかすは 水にさらして真っ白に
あまりの白さに 目がくらんだ
ふたりで坂を登っているつもりだった
ひとりよがりの 不毛な涙に濡らされて
道標はかすれて 読めなくなってしまった
きみの歩みに合わせて
透明な袋の中で 右に左に規則正しく
いつもの土のついたままのゴボウ しあわせそう
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