杖/
藤原絵理子
またひとり 友達が逝った春
ホームの売店で香典袋を買う
無愛想な店員が差し出す
派手な化粧に 朝日が散乱する
押し頂くような仕草で受け取り
擦り切れたバッグに入れたとき
倒れた杖が転がって 降りてきた人波にのまれる
小舟は 嵐に弄ばれる
からんからん
乾いた音は けたたましいアナウンスにかき消され
押し黙った行進に引きずられて 遠くへ
七十七の誕生日に 孫がくれた
その杖が去っていくのを なすすべもなく
眺めるだけ 逝った人を懐かしむ目で
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