新しい雨/伊藤 大樹
 
東京にもう雨は降らないらしい

眠らずとも
目覚めなくともよくなるまで
幾世紀を費やし
浪費するのは何も砂ばかりではない

やさしい飲みもの
歴史をごみ箱にいくら捨てても
まるで甲斐がない
不在だけが正しい

わたしは空の貯金箱
穹窿状の内部で
骨たちが からからと透明な音を立てる

それはほとんど悲鳴のようで
痛い

雨は傷口によく沁みる

でも
東京にもう雨は降らないらしい

だから わたしはわざと油断して
新しい夜を眠りはじめる

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