新しい雨/
伊藤 大樹
東京にもう雨は降らないらしい
眠らずとも
目覚めなくともよくなるまで
幾世紀を費やし
浪費するのは何も砂ばかりではない
やさしい飲みもの
歴史をごみ箱にいくら捨てても
まるで甲斐がない
不在だけが正しい
わたしは空の貯金箱
穹窿状の内部で
骨たちが からからと透明な音を立てる
それはほとんど悲鳴のようで
痛い
雨は傷口によく沁みる
でも
東京にもう雨は降らないらしい
だから わたしはわざと油断して
新しい夜を眠りはじめる
戻る
編
削
Point
(10)