しぼむ/
岡村明子
何度ささやいたかわからない
あいしている
のうち
一度だけは
「哀している」
と言ったのだ
きみは気づかないが
かなしもまた愛し
あいしもまた哀し
きみが肩に頭をのせているあいだ
花瓶の大きな百合の花が
くったりとしおれていったのだ
私の眼は乾燥して
まばたきするたび
かちかちと音がした
あいしている
と聞かれたから
答えたのだ
きみの脳がどう咀嚼していようと
私はたしかに
哀していた
私の貧弱な肩に
きみの頭は重すぎたんだ
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