布団ひっかぶって寝転がっても/イナエ
 
海が盛り上がり 
浪が陸に襲いかかる 
浮き桟橋を 港深く押し込み
道路に船を押し進めていく 
車が逃げる 人が逃げる 
テレビの画面

ソファーに掛けた私には
わらしべ一本投げ入れられない現実
あの夜の恐怖がよみがえり胸を揺する

 風が海を誘って陸にかみつき
 人間の集めた丸太を解き放して
 家を人を襲っていたことも知らないで
 路地裏を抜ける風雨に怯える家の
 撓む窓ガラスを押さえていた
 暗い宙を屋根瓦がひらひら流れていく
 “もしガラスに当たったら…
 砕け散った窓ガラスが襲いかかる幻想に
 無力感が背をつらぬく
 “こんなことをしていたところで…
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