深海魚の気持ち/亜樹
 
 遮光カーテンは閉めきったまま
 四角い箱の中
 スマートフォンの青白い灯りを頼りに
 じっと目を凝らす夜。

 
 ここいらはもう海の底でした。
 重たくて、暗くて、冷たくて、塩っ辛くて。
 生臭い体液の匂いが生でした。
 その底に沈む、醜い魚。
 ぐねぐねした肌。
 濁った目。
 鋭い歯は何の力もなく、
 自身の舌を、
 痛めつけ、
 そうして吐き出す、あぶくが一つ。
 また一つ。
 

 心臓だけがうるさく叫び、目は冴え、その癖頭はかすみ。
 自分からは動かないくせに、誰かが見つけてくれるのを待っている、
 さもしい魚のそのおぞましさ!
 特別な才能なんかを、持っているわけでなく、
 誰かにとっての、必要にもなれず、
 舌の根は乾き、もつれ、
 呼吸ですら満足にできず、
 そのくせ浅ましくも報われる日を待っている、
 深海魚の吐く、そのあぶくが一つ。
 また一つ。






はじけてしずむ






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