出発/葉leaf
 


出発は時刻を持たない
ただ消長する獣の声が遠くに響くのみだ
石たちは獣とともに鳴動する
その冷たいおもてに私はまなざしを遺していく

かつて出発とは地上から月へ向かうものだった
だが今や出発は地上から地上へと向かうもの
綾なし沸き返る地上の動乱のさなかで
既に出来上がっている道を進むもの

私の前に道はあり
後ろの道は閉ざされた
道は無数に伸びていて
絶えず軌道を変えながら
ほかの人々の道と忙しなく交わっている

もはや孤独など許されない
もはや絶望など許されない
人生は意味であふれかえり
その豊饒さに恐怖するのみ

出発はあまりにも緊密な網の目で
既に群衆に取り巻かれている
私は群衆の中を群衆として歩いていく
勇気とは情熱とは
この複雑な世界で間違え続けることに他ならない

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