インソムニア/さき
 
音がしない部屋で
ボリュームをさらに上げた
テレビの中で
またアナタを思う
暗闇を引き裂く滑稽な光は
私がまた一人なんだと
嗤っていく

さよならをしないとダメだと決めたのは
記憶も薄れるほどの遠い過去
神話の如く神々しい決心を
握りつぶして
泣きつぶして
縋りついた今
それでもまだ

しんしんと更けていく夜を独り
足を擦り合わせる
芯から溶かすことがあっても
どうにもならない
絶対零度が
柔らかいところから
また固めていく
流しきれない
意識が私を
保ち
そして狂わす
意志の力ではない
時の力も
また
運命と呼ぶ

音がしないこの部
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