「失ったのはなに?」/るるりら
白旗を立てたのは
はじめてじゃあなかった
すべてを 無かったことにしたことは
はじめて じゃあ無い
終らせるつもりで立てたフラッグ
あの日 あの場所で憎い辛い人の傍に立てた
悔恨の白い旗
いま あの場所に行ったところで
あの人はいない
あの景色も きっとない
それでも 旗だけが
朽ちもせず
私自身にすら忘れられても
たなびいていた
私は、あの旗を回収して来よう
わたしだけが知っている旗
失っていたものは私の分身
白旗を振る同時に 捨てられたのは私の一部
今の私には 旗を集めることができる
家来を持たぬ 王のように
孤独な記憶の大地に赴き
成熟するほど若くなる女王のように
旗を丁重に わたくしのこの胸にいだき
すべての白旗を翼として
悠々と
明日の空を飛ぶ
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