出会いと別れの雨が降っている/伊藤 大樹
 
息を止めるのも
生き方のひとつと気づいて
息を止めたまま
水に飛び込んだ

晴れていても
目に見えない透明な雨が降っている
名前も知らない人とのあいだにも
透明な出会いと透明な別れが
まるで見たこともない川のように流れている
その唐突な雨に打たれまいとして
人は透明な傘を差して出かける

決して思い出すことのできない秒針が繰られる
そのような愚かさを抱きしめることのほかに
人は人を愛する術を知らない
いつ去ってもいい場所にいることの慰めに
透明な雨は
透明な傘を貫いていつまでも思い出に人を濡らす
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