好色と呼ばぬ山河に捧ぐ/もっぷ
 
わたしがまだ
あなたの子孫の
最初の日にはもちろん
衣服を身に着けると知らず
もちろん衣服を選ぶことも知らず
もちろん日本語は持っているわけもなく

いつかのご先祖様のあなたは
愛を語らず抱き合ったはずでそして
母さんと同じように孕んだその後(のち)の世界で
わたしは動物園の檻のなかではなく
いま 一つのビルの一つの部屋に居ます

いつかのあなたが
空の下 緑の山で 土の上に
産み落としたに違いない
こどももやはりご先祖様で

お線香はあげなくてもよい
偲ばなくてもよいのだと
線引きしたのは誰がいつから
それはどこから わからないままに

きょう
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