虹/青色銀河団
忘れられない人がいる。やわらかな白いカーディガンをきて 水辺のそばで佇んでいた人。手をふって やさしく微笑んでくれた。あかるい霧のような雨が降っていた。ぼくは何気ないそぶりで 自然に振舞おうとしたけど それがとても不自然で まっすぐその人を見詰めることができなかった。拗ねたような顔をした ぼくはまったくの子供だった。
いつも遅れる時計について。時間のながれる速さについて。とおい星の生誕について。南極の短い夏に咲く花について。水銀計について。渡り鳥の飛行距離について。空の大きさについて。銀河系の大きさについて。宇宙の大きさについて。(ちっぽけなぼくの気持ちについて)
雨は止んだ。夕焼けがとてもきれいだった。虹がでていた。不吉なほど美しい虹がでていた。
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