コスモスの頃/藤鈴呼
黄色のサクランボが落ちている
以前 あなたが 言っていた場所に
行ってみた
わざとじゃないの
記憶の糸を まさぐるような
低俗な真似は したくなかったんだし
これが 下品かどうかの判断は
民に 委ねたかったのだけれどね
美しい風の中で
艶やかな髪を
細い指で かきあげながら
小鳥のような声で 囁くアナタが
眩しくて
まぶしくて
太陽の 光よりも
今さっき 咲いた コスモスよりも
もっと、
ずっと。
永遠に 眺めていたかったような秋が
もう そろそろ 終わる
ジャンバーを 羽織る季節
「何だか 色気が ないねぇ」
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